2025年8月23日土曜日

ミレー展から教わる農業の尊さ

ロンドン、ナショナルギャラリーで開催中のミレー展に行ってきました。


ジャン フランソワ ミレーは19世紀に活躍したフランス人画家です。
農家で生まれ育ち、後継ぎとして農業にも携わっていましたが
画家としての才能が芽生えてから
フランス国立美術学校で学び
サロンで多数の作品が入賞しています。

身を立てるために肖像画や
アカデミーで認められるために宗教画なども手掛けていましたが

本人の思い入れが一番大きく後に有名になったのは農民画です。 


ミレー

最も有名な「落穂拾い」が
なかったのが残念ですが
これは同じくらい有名な「晩鐘」

ミレーの祖母が
農作業中に教会の鐘の音が鳴るたびに
作業を中断して祈りをささげていたことから触発されたそうです。


私は幼少のころミレーの伝記を読んだ記憶があるので
日本でも名前が知られていたのではないかと思います。

この伝記なのですが
ミレーの死後に友人が伝記を出版し
ミレーが敬虔で清貧な
農業に身をささげる傍ら農民を描き続けたという
「ミレー伝説」を作り上げ、こういった道徳観が

日本やアメリカで大うけしたようです。
(私が読んだ伝記もおぼろげな記憶でそんな感じだった覚えが)


ミレー展

これもかなり有名な「箕をふるう人


イギリス人美術史家が指摘したところによると

実際のミレーはパリやバルビゾンで
サロンへの作品提出や
パトロンを求めて絵で身を立てることに
生涯をささげていたので正確さに欠けるということでした。


ミレー 種まく人

これは有名なボストン美術館所蔵の
「種まく人」のシンプルバージョン


ミレー 牛乳を運ぶ女

感動した「牛乳を運ぶ女」。
牛乳がこぼれないように
壺の蓋代わりに若草が詰められており

肩に担いだ壺を安定させるため
革ひもを頭部に引っ掛け
手首に通している。

夜更けで月が登り始めた光が美しい。


ミレー 絵画

落ち穂をかき集める二人の農婦。
裸足で立っている若い女性と
疲れた様子の年配の女性が対照的。


ミレー 作品

薪を背負った女性たち。
なんだか人生の比喩のようにも感じられる。

ミレーの作品に登場する農民たちは
顔の表情などが細かく描き込まれておらず

陰影などで縁取られているのが
更なる威厳を醸し出しています。

人物自体も細々と描き込まず

シンプルな輪郭で動きを巧みにとらえ
人物の人生を反映したような
構成で支えられています。

現代においても
人が生きていく糧を生み出す
農作業の尊さに感嘆させられる作品たち。

生涯農業に携わっていたわけではなくても
子供の時から農民を写生し

農業に親しんだ人にしか描けない
肉体労働への尊敬の念がひしひしと伝わってきました。

こういったテーマは洋の東西を問わず
感動をもたらしますね。



















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