2021年11月7日日曜日

男の生き様をフランスハルス展にみる

ロンドンのウォーレス コレクションで開催中の「フランス ハルス 男の肖像画展」を訪ねてきました。


ウォーレス コレクションは繁華街のすぐ裏にある
貴族が住んでいたお屋敷を改造したとても素敵な美術館です。
詳細は以前のブログをご覧ください。


フランス ハルスは17世紀オランダで
レンブラントと同時期に活躍した肖像画家です。

口紅とビューラー

ハルス展の題材とは対照的な自作の口紅とビューラーの水彩画


レンブラント同様
モノトーンの抑えた色調ですが
レンブラントに代表される荘厳で重みのあるスタイルとは対照的で

キャンバスから抜け出てきそうなほど
生き生きと描かれた
巧みで軽やかなタッチの人格描写が特徴です。

ウォーレス コレクション所蔵の名作「微笑む騎士」と共に
1部屋にずらりと並んだ
13点の厳選された男性の肖像画。


フランス ハルス展

17世紀オランダで、有名画家に肖像画を依頼していたのは貴族や王室だけではありません。

世界各国との取引で巨大な富を築いていたオランダ商人は有力なパトロンでした。

フランス ハルスの商売人の肖像画は
見るからに商売人のおっさんという面持ちと
富を誇示する最高級の服飾とのギャップが面白い。


フランス ハルス 肖像画

この肖像画がよい例ですが

館内のオーディオ解説で時の人
コンテンポラリー陶芸作家のグレイソン ペリーが

「パブでビール飲んでサッカー中継観てるおっさんにこういう人いるいる」
とコメントしていたのに同感。


赤ら顔で恰幅の良い体を包む
シックなグレーのグログランシルクの光沢が眩しい。


フランス ハルス肖像画
この人は貴族の遊び人だったそうで
しょっちゅうパリを訪れては
この肖像画で着ているような
金の刺しゅうを施した贅沢な衣装を
何着も注文していたのだとか。


フランス ハルス肖像画

どうもこの椅子に座って体をねじって後ろを振り返る
というのが「決めのポーズ」だったようです。


この人は商人の街、ハールレムの有力者だったそうで
一筋縄ではいかなさそうな感じが
顔の表情に表れていると思いませんか?



フランス ハルス肖像画


これはハルスの晩年の作。
80代で、眼も体も不自由な中で描いた作品です。
身動きが不自由で集中できる時間も限られていたでしょう。

自分自身の感覚に一層頼ることになり
筆遣いは更にルースで奔放になっています。


特にマントのひだの部分など
この手法が後に
マネなどの画家に大きな影響を与えたと言われています。


こういった絵をみると、本当に刺激になります。

人生が終わる直前まで描き続けられたら
どれだけよいでしょう。







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