2021年10月18日月曜日

プッサン展で栄枯盛衰を考える

ロンドン ナショナルギャラリーで開催中のニコラ プッサン展を訪れました。


ニコラ プッサンは17世紀半ばに
ローマを主な拠点として活躍したフランス人の画家です。

バッカスなどのギリシャ神話をモチーフにした作品が多く
バロック絵画が全盛の時に活躍した画家ですが

バロック絵画に代表されるダイナミックでシアトリカルなスタイルというよりは

19世紀初期にフランスで主流となった新古典主義(Neo Classism)の先駆けとなった
統制の取れた緻密なスタイルが特徴です。


踊る女性イラスト

ニコラ プッサンにインスピレーションを得た作品


描くのが難しい、複雑なポーズや動きを取った神話の登場人物を
絶妙なバランスで配置することによって
キャンバス上で全ての登場人物が凍り付いたような不思議な安定感が生まれます。


二コラ プッサン絵画
展示されている作品のほとんどがナショナルギャラリー蔵で
常設展で見られる作品だったのですが

この作品はアメリカのミズーリ州の美術館から運ばれてきたもの。

中央の馬の下半身の男性二人
そのうちの一人に乗った女性の計三人が
斜めに傾くように構成されているのが
視点が定まりかねない構図に張りを与えています。

更に見ていくと
馬車に乗った青年、天使、前述の三人がVの字型の構成を築いているので
構図に更に安定感が生まれ
カオスになりかねない設定にメリハリがついています。


厳密にいうと混沌としたシーンや大げさな身振りなどは
バロック絵画の域に入りますが

緻密に練られたレイアウトと感情を抑えた仕上がりが
古典主義のスピリットに近いと言えます。

プッサンペン画

もう一つの見どころは
普段はなかなか見られないエリザベス女王所有の美しいペン画。



プッサン展

展覧会館内


写真右手の右側の男性はナショナルギャラリー館長の
ガブリエレ・フィナルディ氏


二コラ プッサン 絵画

プッサンの代表作 Dance to the Music of Time



めぐるめく終わりのない踊りにふける4人。

手前右手の、髪に真珠を編み込み、金のサンダルを履いた女性は「富」を表し

左手の髪に花をあしらい、意味ありげな微笑みを浮かべた女性は「快楽」を表し

後方の、
粗末な衣をまとい枯れたローレルの冠を被った男性は「貧困」を表し

その横のターバンで髪を覆った女性は「労働」を意味すると言われています。


つまり
貧困から逃れるために必死で働いて
富を築いたので快楽にふけったら
また貧乏になった
と運命が永遠にぐるぐる回っていることを表しています。





0 件のコメント:

コメントを投稿