2022年4月15日金曜日

ゴッホ自画像展で心理を探る

コートールド ギャラリーで開催されているヴァン ゴッホの自画像展を訪ねてきました。


現存するゴッホの自画像37点のうち、16点が展示されていました。うち15点の写真を撮ってきたのでお楽しみください。(残りの一点をどこで見逃したのか覚えていない)

肖像画は1886年の春から1889年の秋までのわずか3年間のあいだに描かれたものです。(ゴッホは1890年の7月に自ら命を絶っています。)

これだけ多くの自画像を制作した理由の一つとしてモデルを雇うお金がなかったというのもあったようです。描き終わったキャンバスの裏側を使って描いたりしていました。

自画像を描く背景には精神的に疾患を抱えた自らの心の在り方を探るというよりは

色調や筆遣いなどの技術を様々な方法で試して
独自のスタイルを築き上げていくことに重きを置いたといわれています。

にもかかわらず自ずと本人の精神状態が絵画に表れているのが
見て取れました。

ゴッホといえば、美術にあまり興味のない人でも黄色や緑、青色のビビッドな色調と絵の具を厚ぼったく塗りつけたパワフルな筆遣いのスタイルはご存じだと思います。

パリに滞在した期間から、南フランスの療養所で一生を終えるまでの作品を
年代順にみていきます。


  ゴッホ自画像
パリで活動していた頃の初期の作品。(1886年)
ゴッホ特有のスタイルとかなりかけ離れていますね。

画家のマネなどの影響が濃く
油絵の具をオイルでかなり薄く溶いて
伝統的な油絵のようなフラットな質感になっています。




ゴッホ自画像
パリで描いていた頃や
初期の自画像は
認めてもらいたい、尊敬されたいという思いが強く
スーツなど改まった服装の作品が多いのが特徴です。
この作品は1886-87年の冬にパリで制作されたもの。




ゴッホ自画像
この点描がのちに太いストロークに進化していきますが
点描はスーラなど新印象派から影響を受けています。
背景もオレンジを地に入れた点描で、素敵です。(1887年春、パリ)




ゴッホ自画像
またまたフォーマルな装いですが
淡い色調で、シリアスな面持ち。
筆遣いがかなり大胆になってきています。
1887年春、パリにて。



ゴッホ自画像
背景を塗り込まずに点描で。
1887年春ー夏、パリ。




ゴッホ自画像
絵を描くときのスモックを着用。
顔のアングルなど、様々に試みています。1887年夏。
    



ゴッホ自画像



ゴッホ自画像
日光が強い夏に現場で風景画を描くとなると
麦わら帽子は不可欠でした。

ほぼ同時期に描かれた2作品ですが
1点目はかなり細かな点は省略されていてよりモダンな印象。

仲間の画家と描き合いっこをして自画像を交換することもあったよう。




ゴッホ自画像
顔の部分に絵の具を肌の色にブレンドせずに
明るい黄色や青のストロークをのせていく
ゴッホ独特のスタイルがでてきました。
1887年秋、パリにて。




ゴッホ自画像
印象派のテクニックの影響が濃い
1887-1888年冬の作品。




ゴッホ自画像
上の作品と同じころに描かれた
一本一本の大胆なストロークが顕著すぎて
チューバッカ状態になってしまっている作品。
1887-8年の冬にパリで制作。




ゴッホ自画像
パレットと筆を抱えた作品。(1888年の1月、パリ)
スモックの青の微妙な色調がよい。
実直で純粋な面が伝わってくるような作品です。




ゴッホ自画像
南仏に移り住んでから
画家ゴーギャンとの共同生活がうまくいかず
自ら耳を切り落としてしまった直後の有名な作品。
背後にゴッホが大好きだった浮世絵が飾られています。(1889年、アルル)


南仏、サン レミの療養所に入ってから描かれた次の2点が同じ部屋に展示されたのは130年ぶりだそうです。



ゴッホ自画像
うーん、病んでいるなと思わせる
見るのが辛くなるようなこの作品のほうが
後に描かれたと思う人が多いようですが
(私もその一人)
実は2点目のほうが後に描かれたそうです。


ゴッホ自画像

解説者などは
「自信を取り戻した一作」とうたっていますが

うねるように塗り込めた筆運びと

普通なら清涼感や静寂をもたらす青のトーンも
化学薬品のようなギラギラとした色合いを帯び

狂気を感じさせられたのは私だけでしょうか?

同じパレットと筆を持った肖像画でも
1年前の作品と比べて
スタイル的に「ひまわり」などの作品に近い
一般的に知られているゴッホのスタイルですね。























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